Saaspocalypseは、一般ユーザ企業の現場ではもう始まっている
「Saaspocalypse(SaaSの終焉)」という言葉を、最近よく見かけるようになりました。
ただし、一般ユーザ企業の現場から見ると、これは SaaSが使えなくなる話ではありません。
本質は逆です。 SaaSが当たり前になりすぎた結果、価値の置き場所が変わった。 それが、いま起きている変化です。
まず、公開データで確認できる事実
このテーマに合わせ、2025年以降の「株価・評価」の公開データだけに絞って見ると、次の傾向が確認できます。
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クラウド/SaaS系ETFは、2025年にすでにマイナス圏の銘柄群がある
WisdomTree Cloud Computing Fund(WCLD)の2025年末データでは、
YTD(NAV)が -6.64%。
参考: https://www.wisdomtree.com/investments/etfs/megatrends/wcld -
ソフトウェア大型ETFも、2026年初に急落して再評価局面へ
iShares IGV では、2025年の通年リターンは +5.62% だった一方、
2026-02-09時点YTDは -19.55%。
参考: https://www.ishares.com/us/products/239771/ishares-north-american-techsoftware-etf -
「売上成長だけで高評価」は崩れ、バリュエーションは2025年に圧縮
SEG 2026 Annual SaaS Reportでは、SEG SaaS IndexのEV/Revenue中央値が
6.4x(1Q25)→ 4.8x(4Q25) まで低下。
参考: https://softwareequity.com/research/annual-saas-report -
一方でM&Aは増加し、業界は“消滅”ではなく“選別・再編”へ
同レポートでは2025年SaaS M&Aが 2,698件(前年比+28%)。
つまり資金が消えたのではなく、評価軸が厳格化したと読めます。
参考: https://softwareequity.com/research/annual-saas-report
要するに、2025年以降は
「SaaSそのものの終わり」ではなく、「SaaSの価値評価の見直し」が進んでいる、
というのがデータからの読み取りです。
先に結論
これからの競争力は、
- どのSaaSを導入しているか
- どれだけ機能を知っているか
ではなく、
- SaaSを意識せず業務を回せる設計になっているか
- 判断の質と速度を上げられているか
で決まります。
一般ユーザ企業におけるSaaSの現在地
多くの企業ではすでに、次のようなSaaSが業務の中核です。
- CRM
- 名刺管理
- ワークフロー
ここで重要なのは、主な利用者が技術者ではなく現場担当者だという点です。
現場担当者が求めているのは、
- 設定の自由度
- 詳細な構造理解
- 高度なカスタマイズ
ではありません。
求めているのは、 「考えずに、正しく、速く仕事が進むこと」です。
SaaSは「導入プロジェクト」から「業務前提」へ
以前のSaaSは、
- 導入する
- 学習する
- 定着させる
というプロジェクトでした。
いまは違います。
SaaSは選択肢ではなく、前提条件
CRMがある前提で営業活動が設計され、 名刺管理がある前提で顧客接点が整理され、 ワークフローがある前提で承認プロセスが組まれる。
つまり、SaaSそのものは見えにくくなり、 業務の土台として溶け込んでいます。
AIで変わったのはUIより「期待値」
AIで急激に変わったのは、画面レイアウトよりもユーザの期待値です。
- 入力は最小で済ませたい
- 操作よりも、使える結論がほしい
- 検索するより、問いかけて答えを得たい
現場担当者は、
- どこに入力するか
- どの順でクリックするか
を考え続けたくありません。
これからのSaaSに求められるのは、 操作対象ではなく、思考と判断を助ける実務レイヤーです。
影響を受けるのは、SaaS提供者だけではない
この変化は、SIerやソフトウェアリセラーの価値にも直結します。
価値が下がりやすい支援
- 機能説明中心の提案
- 画面操作を前提にした導入支援
- 「この機能で何ができますか?」だけの会話
価値が上がる支援
- 業務文脈を踏まえた設計
- AIを含む運用全体の最適化
- 利用者が迷わず回せる業務状態の構築
言い換えると、売るべきものはSaaSそのものではなく、 SaaSを意識しなくてよい業務状態です。
誤解されやすい3点
- SaaS終焉 = SaaS不要、ではない
- AI活用 = 内製化一択、でもない
- SIer不要論 = 価値消滅、ではない
正しくは、 価値の中心が「実装」から「業務設計と意思決定支援」へ移るということです。
まとめ
一般ユーザ企業にとってのSaaspocalypseとは、 SaaSの否定ではなく、SaaS中心思考からの卒業です。
- SaaSは残る
- ただし主役ではなくなる
- 主役は「業務成果」と「判断品質」になる
この視点を持てる企業ほど、AI時代でも運用が強くなります。
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