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AIはどこで仕事をしているのか

ChatGPT Work、Claude Cowork、Copilot Coworkの違い

「AIに仕事を任せる」という言い方を、最近よく聞くようになった。

資料を読ませる。市場を調べさせる。Excelを分析させる。会議の記録から論点を拾わせ、PowerPointのたたき台まで作らせる。

まず、3つのサービスとは

ChatGPT Work、Claude Cowork、Microsoft 365 Copilot Coworkは、どれもAIと会話するだけのサービスではない。必要な資料を探し、複数のファイルを読み、分析し、成果物を作るところまで、一連の仕事を任せるためのサービスだ。

つまり、この3つはいずれも2026年に登場したばかりの新しいサービスである。わずか半年ほどの間に、主要なAI企業が相次いで「会話するAI」から「仕事を引き受けるAI」へ踏み込んだ。

3つとも、利用者が目的を伝えると、AIが必要な情報や手順を考えながら作業を進める。ただし、どの情報へアクセスし、どこで処理するかは大きく異なる。

画面だけを見ていると、似ている部分も多い。

ところが、中で何が起きているのかを見ていくと、この3つはかなり違う。

違いが最も分かりやすく表れるのが、「AIはどこで仕事をしているのか」という点だ。

Claude Coworkは自分のPCにかなり近い場所で働く。Copilot CoworkはMicrosoft 365のクラウドの中で働く。ChatGPT Workは、その両方を使い分ける。

これは技術的な実装の違いだけではない。

AIエージェント 主な作業場所 特徴 PC性能への依存
Claude Cowork ユーザーPC上の隔離されたLinux VM ローカルの案件ファイルを扱いやすい 比較的高い
Copilot Cowork Microsoft 365クラウド Outlook、Teams、SharePointなどを横断しやすい 比較的低い
ChatGPT Work Cloud+Local 外部調査とローカル作業を使い分けられる 使い方による

普段どこに資料を置いているのか。メールや会議の情報をどこから取ってくるのか。PCを閉じても仕事を続けられるのか。そして、そもそもどんな仕事をAIに任せやすいのか。

作業場所の違いによって、そこまで変わってくる。

先に結論

3つの違いは、次のように整理できる。

ただし、これは単純な優劣ではない。

同じ「プロジェクトを分析して」という依頼でも、必要な情報がどこにあるかによって、AIにとっての難易度は変わる。だから仕事用AIを選ぶときは、モデルの賢さだけでなく、自分たちの仕事が存在している場所まで、そのAIが来られるかを見る必要がある。

Claude Coworkは「案件フォルダの隣」で働く

例えば、ある案件についてこんなフォルダがあるとする。

提案書、クライアントから受領したExcel、過去の議事録、インタビュー記録、分析途中のPowerPoint、参考資料。数か月仕事をしていれば、ファイルの数はかなり多くなる。

Claude Coworkが面白いのは、こうしたPC上のファイル群を扱うことを強く意識した設計になっていることだ。

ClaudeのAIモデル自体はAnthropicのクラウド上で動く。一方、ファイルの読み書きやコード実行を安全に行うため、ユーザーのPC上にはClaude用の隔離されたLinux仮想環境が用意される。

少し乱暴に言えば、自分のPCの中にClaude専用の作業室を一つ作り、そこへ案件フォルダの一部を渡すイメージに近い。

Anthropicの説明によると、Claude Coworkの初期版ではエージェントの処理全体がVM内で動いていた。現在は信頼性を高めるため、エージェントの制御部分をVMの外へ移しつつ、コード実行は引き続きVM内に隔離している。ユーザーが選んだ作業フォルダだけを見せ、読み取り専用、読み書き可能、削除不可といった権限を選べる設計だ。

そのため、次のような仕事とは相性がよい。

コンサルティングの現場では、すべての情報がきれいに一つのシステムへ集約されているとは限らない。結局、プロジェクトフォルダにExcelやPowerPointが何十個も並んでいる、というケースは珍しくない。

そう考えると、Claude Coworkの「データを一か所へ集めるのではなく、AIの作業環境をデータの近くへ持ってくる」という発想には合理性がある。

その代わり、PCへの依存度は3製品の中では比較的高い。

ClaudeのAIモデルをPCで計算しているわけではないので、高性能GPUが必要になるわけではない。それでも、Claude Desktopに加えてLinux VMとその中のプロセスが動くため、メモリ、CPU、SSDの性能は無関係ではない。

Teamsを開き、PowerPointを何本か開き、Excelも巨大で、ブラウザにはタブが30枚ある。そんなコンサルタントの典型的なPC環境では、16GBと32GBのメモリ差が今まで以上に効いてくる可能性がある。

Copilot Coworkは、PCまで降りてこなくても仕事ができる

Copilot Coworkは、ほぼ反対の発想から作られている。

Microsoftから見れば、仕事に必要な情報のかなりの部分はすでにMicrosoft 365にある。

メールはOutlook、会議はTeams、ファイルはSharePointやOneDrive、予定はCalendarにある。ユーザーや組織の情報もMicrosoft側にある。

それならAIがわざわざPC上のOutlookを起動し、メールを探し、Teamsを開き、SharePointの画面をクリックする必要はない。

裏側から、権限に沿って直接情報を取ればよい。

例えば、次のような仕事を考えてみる。

先週のA社プロジェクトについて、会議で決まったことと、その後メールで議論された内容を確認して、次回会議の論点をまとめて。

人間ならTeamsを開き、会議記録を探し、Outlookを検索し、SharePointから関連資料を探す。

Copilot Coworkでは、こうしたMicrosoft 365上の情報をWork IQを通じて横断的に扱える。Work IQは、メール、会議、チャット、ファイルなどの業務データを、ユーザーの権限を保ったままAIの文脈として使うための仕組みだ。

ここは、単純な「AIモデルの賢さ」では測りにくい強みだ。

多少モデルの能力差があったとしても、必要なメール、会議、資料、予定表を最初から横断して見られるAIには、それだけで大きなアドバンテージがある。

そして、処理の中心がMicrosoft側にあるため、ローカルPCへの依存も比較的小さい。Microsoftは、クラウドでホストされるタスクはノートPCを閉じても実行を続けられると説明している。

Copilotを使うために、社員全員へ高性能PCを配らなければならない、という構造ではない。

企業全体へAIエージェントを広げることを考えると、これは地味だが重要な違いだ。

もちろん、すべての仕事がMicrosoft 365の中にあるわけではない。

PCのローカルフォルダにしかないファイル、クライアントから一時的に受け取ったデータ、Microsoft 365とは別のWebサービスなどを扱う場面では、クラウドだけでは完結しない。

そのためMicrosoftも、プラグインや外部サービスとの接続、Edgeを使ったブラウザ操作へ機能を広げている。

それでもCopilot Coworkの基本思想はかなり明確だ。

「仕事の情報がクラウドにあるなら、AIもそこで働けばいい」

Microsoft 365を仕事の基盤として使っている企業ほど、この設計は効いてくる。

ChatGPT Workは、その中間にいる

ChatGPT Workは、ClaudeとMicrosoftのどちらか一方に寄せるのではなく、クラウドとローカルの両方を使えるようにしている。

Web版やモバイル版のWorkはクラウドで動く。長い調査や資料作成を任せ、別の端末から続きを確認することもできる。

一方、デスクトップアプリのWorkでは、許可したローカルフォルダやデスクトップアプリを扱える。ローカルで始めた作業と成果物は、ユーザーが明示的に移動または共有しない限り、そのPCに残る。

例えば、次のような仕事を考える。

この業界の最近の動向を調べ、主要企業の動きを整理したうえで、手元にあるクライアント資料と比較して示唆をまとめて。

前半の外部調査はクラウドと相性がよい。後半で手元の資料を扱うなら、ローカル側が必要になる。

つまり、仕事に合わせてAIの作業場所を変える。

この柔軟性は、コンサルティングの仕事とは相性がよさそうだ。

コンサルタントの情報源は一か所ではないからだ。

社内のメールや会議だけを見る仕事もあれば、大量のローカルファイルを読む仕事もある。外部の市場情報を徹底的に調べることもある。案件によって情報の置き場所そのものが変わる。

ChatGPT Workは、そのばらつきに対して「どこか一つへ情報を集約する」のではなく、「AI側が仕事に応じて移動する」というアプローチを取っているように見える。

一方で、この柔軟性は利用者側にも少し理解を要求する。

今の仕事はクラウドで任せるべきなのか。ローカルで動かすべきなのか。機密情報を含むなら、組織の設定や権限はどうなっているのか。

使う側がそれをある程度理解していた方が、AIをうまく働かせやすい。

「どのAIが賢いか」だけでは、仕事用AIを選べなくなる

ここまで見ていくと、ChatGPT、Claude、Copilotの比較で「どのモデルが一番賢いか」だけを議論することに、少し違和感が出てくる。

実際の仕事では、モデル性能以外の要素がかなり大きい。

例えば、過去3か月の案件を振り返りたいとする。

必要な情報がすべて案件フォルダにあるなら、Claude Coworkのようにフォルダ全体を扱えるAIは便利だ。

Teamsの会議、Outlookのメール、SharePointの資料に情報が分散しているなら、Copilot Coworkの方が自然かもしれない。

そこへ競合調査や市場環境の分析まで加えるなら、ChatGPT Workのクラウド側の能力が効いてくる。

同じ「プロジェクトを分析して」という依頼でも、そのプロジェクトの情報がどこに存在しているかによって、AIにとっての難易度が変わる

これは、今後AIを業務へ組み込むうえでかなり重要な視点になると思う。

これまで私たちは、AIを「人間が情報を渡して質問するもの」と考えてきた。

資料をアップロードして、質問を書く。AIが答える。

ところがCoworkやWorkの世代では、人間が毎回すべての情報を準備する必要がなくなり始めている。

AI自身が必要な資料を探し、複数の情報源を読み、作業を進める。

そうなれば、AI選定の基準も変わる。

文章が自然か、回答が賢いか、ベンチマークで何点だったか。それらはもちろん重要だ。

ただ、その一段手前に、次の問いが出てくる。

「このAIは、自分たちの仕事が存在している場所まで来られるのか」

ClaudeはPCに隔離された作業環境を作る。MicrosoftはAIをMicrosoft 365の中に置く。OpenAIはクラウドとローカルを使い分けられるようにする。

3社の違いを見ていると、AIエージェントの競争は、単なるモデル性能の競争から、「AIをどこで働かせるか」という設計の競争へ広がってきたように見える。

選ぶ前に確認したい4つのこと

仕事用AIを選ぶ前に、少なくとも次の4点を確認したい。

  1. 必要な情報はどこにあるか
    ローカルフォルダ、Microsoft 365、外部Web、業務システムのどこに散らばっているか。
  2. PCを閉じても続けたい仕事か
    長時間の調査や定期処理なら、クラウド実行の価値が大きい。
  3. どこまでの権限を渡せるか
    読み取りだけか、編集や削除、メール送信まで許可するのか。
  4. 成果物だけでなく作業過程を確認できるか
    重要な仕事ほど、出典、変更内容、承認ポイントを人間が追える必要がある。

コンサルタントにとっても、この違いは意外に実務的だ。

AIに何を聞くかだけではなく、どの仕事を、どのAIに、どこで任せるか

これからは、そこまで考えてAIを使い分けることになりそうだ。

参考